第1期第5回新規助成

第1期第5回新規助成(2014年04月01日から1年間)

地元NPOによる息の長い支援が必要に。被災地域のコミュニティの再生、まちづくり、新しい産業創出に取り組む活動を助成しました。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 りあすの森 アニマル&里山セラピー事業 宮城県 650
 特定非営利活動法人 フォトボイス・プロジェクト グリーフを乗り越えて;フォトボイス(写真と声)による 女性グループ支援プロジェクト 岩手県・宮城県 509
 一般社団法人 長面浦海人 長面浦さとうら再生計画 宮城県 650
 特定非営利活動法人 吉里吉里国 「復活の森」再生キャラバン~くらしの復興にむけて~ 岩手県 500
 特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部 南相馬市における農地再生「菜の花プロジェクト」と「放射能測定センター・南相馬」の基盤整備 福島県 502
 特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン 南三陸の特産品を活用し、地域内循環型経済を図る6次産業化支援活動 宮城県 800

概要

助成の趣旨

タケダ・いのちとくらし再生プログラムの一環として、東日本大震災で被災された方々の「いのち」と「くらし」の再生を願い、武田薬品工業株式会社からのご寄付をもとに、被災3県(岩手、宮城、福島県)において活動する民間の支援活動に対して助成を行っています。2012年4月の第1回助成に始まり、これまで新規助成を4回、継続助成を2回、累計41件(いのちの再生で18件、くらしの再生で23件)、団体数30団体の助成を行ってきました。

応募資格

「いのち」と「くらし」の再生に関わる社会的課題を発掘し、その課題を解決するために被災3県において活動する非営利の組織とします。法人格の有無や種類は問いません。ただし、政治的・宗教的な組織は対象としません。

なお医療関係者等の団体による応募については、後述の選考委員会が応募団体を当該団体と判断した場合、寄付金拠出者(武田薬品工業株式会社)に利益をもたらす可能性を排除するために、選考委員会での当該団体を対象とした選定過程において寄付金拠出者は一切関与しません。

さらに、選考委員会が当該団体を助成対象に選考した場合、医薬品業界内ルールおよび寄付金拠出者の制定する規定(透明性ガイドライン)などに照らし、当該団体は当該団体名の公開について寄付金拠出者と同意することをもって、決定とさせていただきます。同意いただけない場合は、選考結果を取り消させていただきますことをご留意ください。

対象経費

応募活動に関わる必要経費(支出項目は特に定めません。運営費や人件費も含むことができます)

助成限度額

助成1件につき500万円~1,000万円(総額3,000万円を予定)

対象となる活動

いのちの再生
人道支援の視点から、社会的に弱い立場にある被災者(子ども、高齢者、病人、障害者、災害遺児・遺族、経済的困窮者等)が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援し、保健・医療・福祉の充実を図る活動。
くらしの再生
復興にむけた基盤整備支援の視点から、被災した人々が生きがいのある暮らしを回復できるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動。なお、これらの活動に関わる調査研究や政策提言活動も対象とします。

応募期間

2014年4月1日から1年間(上記期間の終了時、継続助成の可能性があります)

選考方法

「いのちとくらし再生委員会」内に設置する選考委員会にて、選考を行い決定します。選考過程で、必要に応じて関連資料の提示依頼や、応募団体へのインタビュー等を行います。

選考基準

下記の点で高く評価されたものを選考します。

  • ア)社会的意義:本プログラムで定める対象活動としての社会的意義が大きい。
  • イ)現地性:被災者のニーズをよく把握し、地元の団体と連携がとれている。
  • ウ)実現性:実施体制・スケジュール・予算等が適切で活動の実現性が高い。
  • エ)実施能力:応募団体には、応募内容を実施するに十分な組織基盤や活動実績がある。

応募状況

応募総数は65件。第1回の131件の約半分で、前回の74件と比べても減少している。テーマとしては、いのちが29件、くらしが36件であった。地域分布では被災地3県(岩手12件,宮城21件,福島10件)の43件に山形県の1件を加えて東北は44件(67%)である。全国的には東京都(10件)以外、他府県はわずかにとどまった。応募総額は4億8,773万円、平均応募額は750万円となり、応募額もこれまでより減少している。法人格では、認定を含めてNPO法人が42件(65%)続いて任意団体(11件16%),一般社団法人(10件15%)の順である。

各分類別状況

都道府県別に見た応募状況

※応募があった都道府県のみ記載

ブロック 都道府県 件数
北海道 北海道 1
東北 岩手 12
宮城 21
山形 1
福島 10
関東 栃木 1
埼玉 1
千葉 2
東京 10
東海 静岡 1
愛知 1
近畿 大阪 2
中国 岡山 1
九州・沖縄 福岡 1

被災地3県からの応募状況

県名 市町村 件数
岩手県(12件) 大船渡市 1
盛岡市 3
釜石市 3
花巻市 1
一関市 1
陸前高田市 2
上閉伊郡 1
宮城県(21件) 仙台市 7
登米市 2
亘理町 1
石巻市 6
栗原市 1
松島町 1
利府町 1
気仙沼市 2
福島県(10件) 福島市 4
郡山市 2
いわき市 3
南相馬市 1

法人格から見た状況

法人格 件数
公益社団法人 1
一般社団法人 10
一般財団法人 1
特定非営利活動法人 41
認定特定非営利活動法人 1
任意団体 11

第5回新規助成・第3回継続助成の選考を終えて – 大震災から3年、息の長い支援活動が求められている。「NPOの知恵と力を!」で、被災地の期待に応えよう!

選考結果の概要

今回は、2014年4月から始まる第5回の新規助成と、第3回継続助成について選考した。新規助成は、2012年4月に始まった第1回新規助成から半年ごとにこれまで通算4回助成しており、今回は新規助成としては最終回の5回目である。一方、継続助成は、新規助成の1年後である2013年4月に始まった第1回継続助成から半年ごとに助成し、今回の3回目からは、「新規」に対する継続助成だけでなく「継続」に対する「第2次継続助成」もスタートする。具体的には、2013年3月に終了した、第3回新規助成ならびに第1回継続助成に対する継続助成である。テーマは、従来どおり「被災地にNPOの知恵と力を」で、〈いのちの再生(人道支援)〉と〈くらしの再生(復興基盤支援)〉の2部門である。

選考結果を要約すると、新規助成では65件の応募の中から6件を選定し、継続助成では11件の応募の中から10件を選定した。なお、選定した継続助成団体のうちの「一般社団法人福島県助産師会」から、その「助産所における産後母子入所・ディケア事業」について行政支援が決定したので助成金を辞退したいとの申し出が後日あった。因みに継続助成は、第3回新規助成8団体のうち6団体、第1回継続助成7団体のうち5団体が応募している。

助成額でみると、新規助成は6件3,611万円、継続助成は9件4,990万円で、合計8,601万円となる。〈いのち〉と〈くらし〉の部門別では、新規は2件・4件、継続は4件・5件で全体では6件・9件と、〈くらし〉が多くなっている。以下、新規助成と継続助成について、その傾向や特徴を少し詳しく見てみよう。

新規助成について

新規については、2013年12月12日に公募を開始して12月18日を締切日とした。その結果、65件の公募があり、まず事務局を務める日本NPOセンターのスタッフ5名による予備選考を行った。各自が全ての応募書類を読み込み、選考基準に基づき5段階評価をして意見交換したうえで、上位の評価となった39件(いのち15件、くらし24件)を選考考員会に提出した。

選考委員は、事前に届けられた39団体の応募書類を精読しABC評価して、2月20日の選考委員会に臨んだ。事務局は、各委員の評価結果をまとめた一覧表を作成し、選考委員会での検討資料として提供した。委員会では、選考基準である「社会的意義」、「現地性」、「実現性」、「実施能力」の視点から応募案件をひとつずつ慎重かつ丁寧に検討した。相当の時間をかけて、甲論乙駁の熱のこもった議論が展開され、次第に絞り込まれていった。最終盤では委員による投票で決めるという場面もあり、その結果4件が採択候補、3件が補欠候補と決まった。

この候補決定を受けて、日本NPOセンターのスタッフが2名1組で候補団体や活動現場を訪ねてインタビューした。選考委員会で出された確認事項や疑問点について質問するとともに、団体のトップから話を直接伺うことや現場を目で確認することにより、実施体制や計画の実現性についての認識を深めることができた。そのインタビュ―内容は、2月6日に事務局から委員長に報告され、委員長決裁として助成先と助成金額が決定した。

助成プログラムの概要を簡潔に報告すると、〈いのち〉の部門では、1. 宮城県でのホースセラピーとヨシ原活用事業。2. 被災グリーフを乗り越えて、フォトボイス(写真と声)による女性グループ支援プロジェクト。〈くらし〉の部門では、1. 石巻市の長面浦さとうら再生計画。2. 岩手県大槌町での自伐林業による「復活の森」再生。3. 南相馬市における農地再生「菜の花プロジェクト」。4. 宮城県南三陸町における6次産業化モデルによる地域経済復興の取組み、である。

継続助成について

継続助成先選考のため、これまでの活動報告を踏まえた応募内容のプレゼンテーションに基づく選考インタビューを、2月6日・7日の両日に仙台で行った。6日は、第1回継続助成の5団体、7日は第3回新規助成の6団体である。そこでは、各団体から10分間のプレゼンテーションがあり、その後に選考委員による質疑応答タイムをとった。応募書類を丹念に読み込んできた選考委員からは、数多くの内容確認や鋭い質問も寄せられた。両日ともプレゼン終了後に、選考委員は5段階評価をしたうえで審議に入り、活発な議論がなされた。将来的な発展可能性が大きい活動は引き続き助成するという考え方から、詳細な内容確認や助成金額を精査するなどの付帯条件付きで、6日は全5件を、7日は6件のうち5件を継続助成することになった。その後事務局で追加的な確認や調査を行い、2月6日に委員長決裁で助成金額を決定した。

助成プログラムの概要を記すと、〈いのち〉の部門では、1. 岩手県山田町での子どもたちの生活支援活動。2. 母と子の笑顔広げる「ママハウス」。3. 震災で大切な方を亡くした人への心のケア活動。4. 被災した不登校・ニートの子どもや若者に対する心理臨床的支援などである。

<くらし>の部門では、1. 宮城県の仮設住宅入居者などへの就労支援を柱とする生活再建。2. いわき市沿岸部での古民家修復とまちの景観保存。3. 未利用森林を活用した自伐林業による就業拡大。4. 障害者アートとデザイン力などによる仕事の開発など。5.避難先での障害者向け就労支援事業の定着化と環境整備などである。

助成申請に見る新たな動き

地域別の応募状況では、東北ブロックは1・2回目の新規助成についてはそれぞれ40%台の応募であったが、3・4回目では63%・61%で、今回はそのウエートがさらに高まり68%となってきている。具体的には、応募総数65件のうち約3分の1にあたる21件が宮城県からである。つづいて岩手県が12件、福島県が10件であった。これは、被災地3県の団体が頑張っていることを示しているが、一方では被災地から離れた地域での関心の「風化」が懸念される。

本プログラムでは、できるだけ応援を継続しつつも、助成が得にくくなった際にも活動を継続できるよう「組織基盤」の整備と「事業力」向上を後押しする取り組みも続けている。具体的には主に仙台で実施している助成団体向け中間情報交換会の際に研修プログラムも盛り込むとともに、個別的な運営相談にも積極的に応えている。また「風化」が進まぬよう、本報告書の発行によりNPOの奮闘を伝えるとともに、成果報告会を東京、大阪などで開催し、助成を受けた団体関係者を事例報告者として招き、被災地の復興を進める市民の努力を広く伝え、意見交換と交流の機会も生み出してきた。

このような取り組みも、今後とも積極的に取り組んでいきたい。

タケダ・いのちとくらし再生プログラム
選考委員会委員長 早瀬 昇
(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 代表理事)

第5回新規助成 選考委員

いのちの再生:人道支援

特定非営利活動法人 りあすの森

応募団体は、震災後に設立された団体で、宮城県石巻市沿岸部の復興支援をベースに、持続可能な村づくり、青少年育成、環境保全、ホースセラピー、ヨシ原再生活用プロジェクトなど多彩な活動を行っている。ホースセラピーのために、ポニー1頭を含めて3頭の馬を飼育し、にっこり乗馬教室を開催している。宮城県は全国的にも不登校率が高く、石巻市はその中でも特に厳しい状況にある。

今回の助成事業では、主に子どもたちや障害者を対象に、馬とのふれあいによるホースセラピーと、北上川ヨシ原における豊かな自然体験プログラムを二本柱とする活動を実施する。

不登校の子どもたちや障害児・者が、乗馬体験を通して馬とふれあい、また農業を通して四季折々の豊かな自然を味わうことにより、日々のストレスを軽減し自己肯定感を持って生きていくようになることを期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 りあすの森

特定非営利活動法人 フォトボイス・プロジェクト

応募団体は、2011年6月から被災した女性たちが「写真と声」を通して、自分たちの経験や地域の状況・課題などを発信する活動を展開している。小グループで話し合い、自らの体験・経験をお互いに振り返り心情を吐露し交流を図るなかで、被災の痛み・グリーフを乗り越えていくことを支援している。この「フォトボイス」という手法は、海外では地域や社会の課題を掘り起こし解決していくために広く用いられているが、日本ではまだ緒に就いたばかりである。

今回の助成事業では、フォトボイスミーティングを被災3県ならびに東京都などで実施するとともに、そのなかで紡ぎ出された「声」を添えた「フォトボイス」展示会を開催する。ファシリテーター養成などにも取り組む。これらの活動により、被災した女性が悲しみや痛みを乗り越えて、力強い人生を歩んでいくことを願っている。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 フォトボイス・プロジェクト

くらしの再生:復興基盤整備

一般社団法人 長面浦海人

応募団体は、津波で壊滅的な被害を受けた石巻市北上河口域の内海・長面浦(ながつらうら)を再生しようと、牡蠣養殖や刺し網漁を営む地元の漁師たちが中心になって、2013年9月に立ち上げた組織である。以来、専門家とともに、復興への道筋を毎月話し合い、番屋建設、情報発信強化、交流の拡大などを柱に漁業の立て直しと漁師の手による地域復興の方針を固め、「長面浦さとうら再生計画」を立ててきた。

今回の助成事業では、番屋を中心とするコミュニティ活動として夏を目途にカフェやレストランを開設するとともに、恵まれた豊かな漁場で育つ牡蠣や海産物のPRや販路拡大に力をいれる。そのことにより、高齢者や女性の仕事と生きがいづくりにもつなげていく。広葉樹林に囲まれた穏やかな内海・長面浦が、豊かな自然を活かしながら漁師の手によって再生されることを期待したい。

 団体概要・事業詳細:一般社団法人 長面浦海人

特定非営利活動法人 吉里吉里国

応募団体は、津波災害復興に向けた新たな雇用創出と経済復興に関わる地域主体の取り組みを、地域住民と一体となって推進している。地域の環境を育むのは森林であり、吉里吉里の森の保全整備は海の再生にもつながり、次世代に残していく活動であるとの考えから、「復活の森」再生事業を行っている。

今回の助成事業の柱はその「復活の森」再生であり、具体的には、森林資源の有効活用をはじめ木質・木材の有効利用、森林空間を利用しての林業学校や森林教室の開催、さらには、副業的な自伐林業の普及を目指しての「おおつち自伐林業振興会」の組織づくりに取り組む。

高齢化と限界集落化が進むなかで、「海と協働する林業」を通して地域コミュニティの維持・再生への働きかけが功を奏し、自伐林業という新たな生業づくりが展開されることが期待される。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 吉里吉里国

特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部

応募団体は、旧ソ連ウクライナ共和国で発生したチェルノブイリ原発事故の被災者救援を目的に1990年に発足した団体である。被災地の医療支援や住民の精神的支援に長年取り組んできており、また近年は植物による土壌浄化を目指した「菜の花プロジェクト」を開始して、汚染した土壌の浄化に具体的な成果を着実にあげている。

東日本大震災では、南相馬市に拠点「放射能測定センター・南相馬」を設置して、食品・土壌・水などの放射能セシウム汚染を検査するとともに、南相馬市内の空間線量を半年毎に測定するという定点観測を継続している。今回の助成事業は、ウクライナでの成果を活かした、南相馬市における「菜の花プロジェクト」支援とこれらの活動全般のための基盤整備である。

ナタネや大豆の栽培によって汚染した土壌が浄化され、新たな農地再生を期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部

特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン

応募団体は、地域資源の再発見やそれらを活かしたまちづくり、自主防災などの地域活動を通じた学びの場を提供することで、住みやすい地域づくりを支援することを目的に、「協働のまちづくり」を実践している宮城県登米市の団体である。震災直後から南三陸町で緊急支援の活動を実施しており、また「南三陸直売所みなさん館」も設立し、地域内循環型経済の仕組みづくりを志向している。

今回の助成事業では、南三陸町において、リーダー研修をはじめとする人材育成・組織力強化活動と、南三陸の海・山・里の地元食材を活用した新規商品化戦略活動(南三陸食ブランド)ならびにそれらのための広報・情報戦略活動に取り組む。

これらの活動により、地元南三陸の農産物・海産物を活用した新商品が開発され、製造・流通・販売に至るまでの6次産業化が図られるとともに、これらの仕事をしっかりと担う人材が養成されることを願っている。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン