第2期第1回新規助成

第2期第1回新規助成(2017年1月1日~2017年12月31日)

「連携・協働」、「住民のエンパワメント」という新しいテーマを掲げて第2期助成がスタートしました。複数の団体との連携・協働することではじめて実現可能となる斬新的かつ創造的な活動を助成しました。同時に震災後5年を経過した被災地の今日的課題に被災地住民が主体的に取り組むことを支援する事業を助成しました。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 アットマークリアスNPOサポートセンター 復興まちづくりとその先を見据えた連携による支援体制の構築 岩手県釜石市、大船渡市、陸前高田市 496
 一般社団法人 さとうみファーム 羊がつなぐ被災地の輪 宮城県南三陸町・石巻市、岩手県岩沼市、福島県飯館村・相馬市 470
 東北・広域森林マネジメント機構 被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト 岩手県田野畑村、宮古市、大槌町、花巻市、北上市、陸前高田市、 宮城県気仙沼市、南三陸町、石巻市、福島県南会津市 500
 一般社団法人Bridge for Fukushima 南相馬市エンパワーメント化事業~データに基づく復興街づくり~ 福島県南相馬市 498
 一般社団法人 ワタママスマイル 『地域子ども食堂』による子どもの居場所づくりと地域コミュニティ再生事業 宮城県石巻市 423

概要

助成の趣旨

日本NPOセンターは、東日本大震災で被災された方々の「いのち」と「くらし」の再生を願い、武田薬品工業株式会社からのご寄付をもとに、被災3県(岩手・宮城・福島)で活動する民間非営利団体(NPO)の支援活動に対して助成を行っています。2012年4月の第1回新規助成にはじまり、2016年9月までに、新規助成を5回、継続助成を6回、累計78件(団体数36団体)の助成を行ってきました。

震災から5年が経過した2016年、タケダ・いのちとくらし再生プログラムは、現在の被災地域の課題を確認したうえで、被災地域と住民の再生と復興を目指して「第2期」の助成事業を5年間継続することとします。第2期助成事業では、新しくNPOと地域の様々な担い手(住民自治組織、社協、専門組織、事業者、行政、他のNPOなど)との連携・協働事業を助成し、より効率的、効果的な地域課題への取り組みと、地域におけるNPOの認知向上を支援します。

助成金額と助成期間

助成1件につき300万円~500万円(総額2,000万円を予定)
2017年1月1日から2017年12月31日までの1年間

助成対象となる活動

被災3県の「いのち」と「くらし」の再生に関わる下記の事業を対象とします。

A. 連携・協働を通じた支援事業

住民自治組織、社協、専門組織、企業・事業者、行政、NPOなど複数の団体と連携・協働して、交流・情報交換だけのつながりではなく、より効果的な地域課題の解決、成果・社会インパクトを生み出すことを実践する活動。

B. 住民のエンパワメントを支援する事業

震災から5年が経過し、外部からの被災地支援が減少する中、コミュニティの再生や地域課題などに地域住民が主体的に取り組むことを支援する活動、および、生活困窮・貧困、子ども・高齢者、障害者、自殺など、震災から5年を経て顕在化してきた被災地域住民の課題に取り組む活動。

「いのち」の再生:
社会的に弱い立場にある被災者(子ども、高齢者、病人、障害者、災害遺児・遺族、生活困窮者等)が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援し、保健・医療・福祉の充実を図る活動。
「くらし」の再生:
被災した人々が生きがいのある暮らしを回復できるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動。

応募期間

2016年10月24日(月)~31日(月)

応募の傾向

タケダ・いのちとくらし再生プログラム第2期の第1回助成に対する応募総数は54件だった。第2期助成として新しく設定した2つのテーマに対する応募は、A. 連携・協働を通じた支援事業には14件(26%)、B. 住民のエンパワメントを支援する事業には40件(74%)だった。複数の団体と連携・協働して事業を実施することを条件としたA. 連携・協働を通じた支援事業は、初めての試みであり、応募団体にとっても戸惑いがあったのか、応募件数が延びなかった。第1期助成と同様、単独の団体での応募が可能なB. 住民のエンパワメントを支援する事業には多くの応募があったが、これまでの事業の継続を目的とした応募が多く見られ、テーマの主旨とのギャップも見られた。

東北3県(岩手県、宮城県、福島県)に本部を置く団体であることを条件にした第2期助成の応募団体の地域分布は、岩手県10件(19%)、宮城県25件(46%)、福島県18件(33%)だった。(3県外からの応募が1件あった。)応募総額は、2億3,697万円、平均応募額は438万円、応募最高金額は上限の500万円、最低金額は230万円だった。法人格別の応募状況は、NPO法人が32件、一般社団法人が11件、任意団体が10件、その他の法人が1件だった。

カテゴリー別応募状況

被災地3県からの応募状況

県名 市町村 件数
岩手県(10件) 宮古市 1
大槌町 1
釜石市 3
遠野市 1
大船渡市 3
陸前高田市 1
県名 市町村 件数
宮城県(25件) 気仙沼市 1
南三陸町 2
登米市 2
石巻市 8
大崎市 1
女川町 2
仙台市 6
亘理町 1
県名 市町村 件数
福島県(18件) 福島市 4
南相馬市 3
喜多方市 1
二本松市 2
会津若松市 2
郡山市 1
いわき市 4
南会津町 1

法人格から見た状況

法人格 件数
特定非営利活動法人 32
一般社団法人 11
医療法人 1
任意団体 10

第2期第1回助成の選考を終えて

選考委員長 早瀬昇

2011年10月にスタートした「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」は、2016年9月末に第6回継続助成の助成期間の満了をもって、5年間の「第1期事業」を終了した。今回は、昨年から本格実施を始めている「第2期事業」における第1回助成の選考を行った。

第1期助成は、2012年4月から開始され、2016年9月末までに、5回の新規助成と6回の継続助成、合計11回の助成を実施した。結果として、東日本大震災の被災3県で、被災住民の「いのち」と「くらし」の再生のために活動をする36団体の78事業を支援した。助成先団体は、様々な困難に直面しながらも、活動の成果を残し、現在も多くの団体が力強く活動を継続、発展させている。この場を借りて、助成先36団体に敬意を表すると共に、プログラムのスポンサーである武田薬品工業株式会社をはじめとした支援者の皆様に厚く御礼申し上げたい。

第2期助成は、東日本大震災から5年を経過した被災地の現状を調査したうえで、助成内容を再検討し、第1期助成とは異なる視点で企画した。第1期に引き続き、東北被災3県で「いのち」と「くらし」の再生を支援する民間非営利団体を助成するが、特に、1. 複数の団体が連携・協働をすることによって、被災地の地域課題に取り組む活動と、2. 地域住民の主体的な取り組みを尊重し、支援する活動を助成することにし、「A. 連携・協働」と「B. 住民のエンパワメント」の2種類の助成応募枠を設けることにした

「A. 連携・協働」での助成では、複数の団体の事業への参加を条件とした。応募書類には、主催団体以外の参加団体について記述する欄を設け、各団体の公印を押印することを求めた。応募団体が自らの力を見極めると同時に、他の団体とつながり、各々の団体が持つ専門性・得意分野を有機的に融合することで1団体では生み出せない成果を目指す事業の提案を期待した。「B. 住民のエンパワメント」での助成は、1団体による事業を助成対象とするが、特に地域住民の参加の視点があること、被災地域の今日的課題に取り組む案件であることを選考基準とした。また、助成対象団体は、福島、宮城、岩手県に団体本部を置いて活動していることを条件とし、今後、現地NPOが持続的に地域の復興の担い手として活動することの重要性を強調した。

今回の助成は2016年10月11日に募集の公示をし、10月24日から31日までを応募受付期間とした。短い募集期間ではあったが、総計54件の応募があった。そのうち、「A. 連携・協働」への応募は14件、「B. 住民のエンパワメント」への応募は40件だった。54件の応募案件は、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」事務局による予備選考を経て30件に絞られた。この30件の候補案件を、5名の選考委員が審査し、計7件の最終候補案件を決定した。その後事務局による選考ヒアリングを経て、12月9日の委員長決裁により、助成案件と助成額を決定した。助成案件は「A. 連携・協働」で3件(1,466万円)、「B. 住民のエンパワメント」で2件(921万円)、の合計5件、助成総額は2,387万円となった。

助成が決定した事業は、「A. 連携・協働」:1. 「復興まちづくりとその先を見据えた連携による支援体制の構築」、2. 「羊がつなぐ被災地の輪」、3. 「被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト」、「B. 住民のエンパワメント」:4. 「『地域子ども食堂』による子どもの居場所づくりと地域コミュニティ再生事業」、5. 「南相馬市エンパワーメント化事業〜データに基づく復興街づくり〜」の5件である。

「A. 連携・協働」の3件のうち、1. は岩手県の被災沿岸圏域のNPO活動を推進するためのNPO支援センターの連携・協働、2. は羊毛による商品開発と販売を目標として、得意分野を持つ宮城県内外のNPOによる広域連携、3. は自伐林業による持続的な雇用創出のための東北三県にまたがる広域ネットワークの創出を目標とした活動であり、3件とも地域を越えた連携・協働を通じて社会的インパクトを目指す野心的な取り組みである。

「B. 住民のエンパワメント」の2件のうち、4. は宮城県石巻市渡波地区の高齢者や子どもの貧困問題に地域住民の参加を通じて取り組む活動、5. は原発事故による避難が解除された福島県南相馬市の施策の策定プロセスへの住民参加を支援する活動であり、2件とも現在の被災地が直面する課題に住民が主体的に取り組むための環境づくりを支援する活動である。

今回の助成は、本プログラムの第1期の助成を受けた団体が活動主体となっている事業と、初めて助成を受ける団体の事業が混在することになった。前者においては、第1期助成で成果を出しながら、その活動を展開、発展した事業を企画提案した団体、後者においては、被災地の今日的課題に取り組む新規案件を提案した団体が選考された。

今回不採用となった応募案件の傾向としては、これまで実施してきた事業の継続を目的とするものが多かった。第2期助成では、1. 新しく、創造性に富み、成果を期待できる事業へのチャレンジと、2. 被災地の今日的課題に取り組む活動を応援していきたいと考えている。次回の助成も同じ方針で募集を行うので、多くの優良案件が応募されることを期待している。

なお、第1期で助成を行ってきた36団体とは、これまでの5年間で、継続助成や、伴走支援を通じて親密な関係を培ってきたと考えている。第2期の助成では、助成額や助成方針を変更したため、助成を通じた支援の機会は限られてくるが、第2期のプログラムでは、新しく組織基盤強化事業など助成以外の支援プログラムを盛り込んでいるので、様々な形での支援を通じて、これからも引き続き東北被災地の復興のために共に歩んでいきたい。

A. 連携・協働

特定非営利活動法人 アットマークリアスNPOサポートセンター

復興まちづくりとその先を見据えた連携による支援体制の構築

アットマークリアスNPOサポートセンターは、2003年に、岩手県釜石市で、官民協働や広域連携による地域社会づくりを目指して設立されたが、震災後、仮設住宅や復興公営住宅でのコミュニティ再生支援など喫緊の課題に対応してきた。今回の事業では、釜石・大槌、大船渡、陸前高田の沿岸圏域のNPO支援組織の連携を試みることによって、震災後、被災地支援のために立ち上がった地域のNPOが復興の担い手として持続的に活動できる組織基盤の強化を効果的に支援するプラットフォームづくりに取り組む。出自の違う、それぞれのNPO支援センターの強みを結集することで、民間が主体的に、復興創生期後の地域社会の在り方を考え、地域づくりを主導する環境ができること、またNPO支援センター間の広域連携のモデルとなることを期待する。

団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 アットマークリアスNPOサポートセンター

一般社団法人 さとうみファーム

羊がつなぐ被災地の輪

さとうみファームは、南三陸町で「羊」を使って新規産業と雇用の創出、コミュニティ活性化に取り組んでいる団体。被災地支援のために地域外から来たボランティアが中心になり、地域住民からの信頼を得ながら、土地を開拓し、観光羊牧場の運営、廃棄わかめを飼料とした羊肉の生産、羊毛の生産などにゼロから取り組んできた。今回は、羊毛の「編み」による商品の開発・生産のために得意分野を持つ他団体との連携を図る。さとうみファームは、第1期助成において、食をテーマに他団体とつながり、新製品の開発、首都圏での交流の場づくりなどにも自発的に取り組んだ。こうした協働のプラットフォームづくりの実績に期待したい。これまでは宮城県を中心に活動してきたが、今回の事業を通じて、より広域的に「羊」に関わる産業形成と地域交流に挑んで欲しい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 さとうみファーム

東北・広域森林マネジメント機構

被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト

東北・広域森林マネジメント機構は、全国で「自伐型林業」を推進してきた自伐型林業推進協会が、これまでの東北被災地での支援の経験を基にして構想した自伐林業に関する東北3県の広域連携における調整機能をもつ団体として設立された新しい組織である。今回の事業は、森林率が8割を超える被災3県において、「自伐型林業」を各地で独自に展開してきたNPO等が連携し、県をまたいで森林資源を管理し、バイオマスによるエネルギー循環を含めた「自律的・持続的・循環型の森林エコシステム」を確立させることを目指している。地域の森林管理に携わる団体間でサプライチェーンを作ろうという広い視点にたった取り組みで、地域にあるリソースをどう活用し、保全していくかという観点や、安定的雇用を生み出し被災後の地域経済を活性化する観点からも、意義のある取り組みと考える。本助成のテーマのひとつである協働・連携に重きを置いたプロジェクトである点が、選考委員会でも高く評価された。今後、実際に動きだす中で各団体の調整や合意形成など困難もあるかもしれないが、協働・連携による社会的インパクトが生まれることを期待している。

団体概要・事業詳細:東北・広域森林マネジメント機構

B. 住民のエンパワメント

一般社団法人 ワタママスマイル

『地域子ども食堂』による子どもの居場所づくりと地域コミュニティ再生事業

東日本大震災から5年以上経過した被災地にあって、これまでの面的な大きな取り組みから、個別化・多様化する状況に対応する支援がますます求められている。一般社団法人ワタママスマイルは、これまでに「ワタママ食堂」を開設し、被災した特に女性を雇用しながら、仮設住宅や復興住宅等の高齢者を対象に、弁当の宅配サービス等で「食」を通した見守り支援を実施してきた。今回は、その活動を「孤食」を余儀なくされている地域の子どもたちにも目を向け、「食」を通じて子どもたちや高齢者が地域とのつながりを作れるよう支援する事業である。まさに個別化・多様化する現在の被災地ニーズにかなった取り組みであると言える。一方で、子どもの貧困は、被災地のみならず日本社会全体の課題でもあり、こうした活動の意義は、単に食を満たす役割だけでなく、地域の社会資源ときちんとつないでいくことが重要である。その意味で、地元行政や専門団体等とも連携した取り組みになるよう期待している。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 ワタママスマイル

一般社団法人 Bridge for Fukushima

南相馬市エンパワーメント化事業〜データに基づく復興街づくり〜

Bridge for Fukushimaは、地元高校生の人材育成、相双地区視察研修ツアー、NPOや社会起業家の中間支援などに取り組んできた団体。今回は、住民主体のまちづくりのための土壌づくりとして、南相馬市でデータブックの作成に挑む。行政による客観的データをまとめるだけでなく、住民へのヒアリングにより、関心、不安、ニーズなどをすくい取る。住民目線を活かしながら課題を可視化することができれば、住民も意見を言いやすくなる可能性が高い。行政の施策に関する住民対話において、客観的データを介することで論点を整え、実現可能な施策を推進することに期待したい。このアプローチの鍵は効果的なヒアリングができるかであり、地元住民から信頼される団体や協力者との連携が不可欠である。この活動を通じて、データブックを活用した住民同士の話し合いや政策提言の場づくりにつないでいく道筋を切り拓いて欲しい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 Bridge for Fukushima