第2期第1回継続助成

第2期第1回継続助成(2018年1月1日〜12月31日)

第2期助成事業が2年目に入り、最初の継続助成の選考により4団体の継続を決定しました。第2期助成の「連携・協働」、「住民のエンパワメント」という2つのテーマにおいて、各2団体が2年目の事業を展開していきます。

「連携・協働」の2事業では、森林や牧羊を地域資源とした産業創出・就業創出を、ともに被災3県に広がる被災地連携ネットワークを構築することにより取り組んでいきます。

「住民のエンパワメント」の2事業では、子ども食堂を軸とした地域支え合いの仕組みづくり、および、データブック作成による地域特性の可視化から住民による復興街づくりに取り組みます。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 東北・広域森林マネジメント機構 被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト 岩手県、宮城県、福島県 400
 一般社団法人 さとうみファーム 羊がつなぐ被災地の輪 宮城県、福島県 400
 一般社団法人 ワタママスマイル 「地域子ども食堂」でつながる地域の居場所と地域支え合いの仕組みづくり 宮城県 400
 一般社団法人 Bridge for Fukushima 南相馬市エンパワメント化事業 ~Evidence Based Policy Makingの手法を用いた、医療・健康リテラシーの向上~ 福島県 400

概要

第2期第1回継続助成の選考を終えて-
地域の再生と未来をめざし、現地NPOと人びとの歩みを支える

タケダ・いのちとくらし再生プログラム
選考委員会委員長 早瀬 昇
(認定特定非営利活動法人 日本NPO センター 代表理事)

今回は、2018年1月から始まる第2期第1回継続助成について選考した。タケダ・いのちとくらし再生プログラム第2期助成事業としての最初の継続助成である。今回の応募には、第1回新規助成をした団体からの応募があった。テーマは、新規助成と同様に「A. 連携・協働」と「B. 住民のエンパワメント」の2種類の助成応募枠を設けて募集した。継続助成では応募可能団体が絞られることもあり、実際に応募があったのは「A. 連携・協働」2団体と「B. 住民のエンパワメント」2団体であった。

継続助成については、これまでの事業の成果と課題を踏まえた形で応募事業のプレゼンテーションによる選考を行っている。今回は、台風21号が早朝に関東・東北を通り過ぎた2017年10月23日(月)に、東京において選考会を行った。

応募の各団体から10分間のプレゼンテーションがあり、その後、選考委員による10分間の質疑応答を行った。選考委員からは、新規助成として実施中の1年目の事業内容および事前に提出された応募書類の内容も踏まえながら、具体的でときには厳しい質問が投げかけられた。

プレゼンテーション終了後、選考委員は4つの評価基準(実績評価、発展・展開性、実現性、予算の妥当性)および「A. 連携・協働」に応募された事業については連携・協働の観点を加えた5つの評価基準において、5段階評価に基づき総合評価をして、選考審議を行った。

単に助成を継続するということではなく、これまでの活動の成果と課題を踏まえ、今回の応募が助成事業をより発展させ地域の復興につながるか、活動において関係者に期待される動きに対応できるかなどを検討するとともに、活動予算の妥当性も含め、活発な議論がなされた。

もっとも、社会のニーズが明確であり、成果が期待できそうなものはできるだけ採択する方針で審査にあたったこともあり、結果として応募のあった4件全てへの助成を決定した。ただし、選考委員会での議論の中で追加質問をまとめ、この確認を経て、助成額を確定した。助成額は各団体400万円であり、4件で1,600万円となった。

今回の特色は、住民が支援を受ける立場ではなく自ら行動していく存在として位置づけられていることである。各事業においては、持続的な雇用・仕事づくりやそのための仕組みづくり、新しいコミュニティづくり、住民が地域の状況を知り話し合い行動につなげるための場づくり、そして、その実現のために関係者・諸機関との連携・協働を形成しながら活動が実施されていくことになる。

本プログラムでは、「いのち」と「くらし」の再生を願い、社会的に弱い立場にある被災者が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援する活動、また、被災した人々が生きがいのある暮らしを回復できるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動を応援している。NPOの組織基盤を強化するための支援を長年実施してきた中間支援組織である当センターが事務局を担い、単に助成を行うだけでなく、事業実施団体への伴走支援を丁寧に行い、引き続き東北被災地の復興のために活動を続ける現地NPOと共に歩んでいきたい。

A. 連携・協働

東北・広域森林マネジメント機構

被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト

本団体は、森林が最大の地域資源である被災3県の山間地において、自伐型林業を普及させることで、雇用創出や地域活性化、そして森林資源の永続活用につなげようと活動を展開している。これまでの成果として、交流会やセミナーを実施して広域ネットワークを創出した結果、少しずつレイヤーが増し、特に被災地へのU・Iターン者や各自治体が受け入れ態勢を整えている「地域おこし協力隊」などが興味を示し始め、自伐型林業展開者は100名を超えた。また、販売・流通も地元企業等連携団体の協力で一歩ずつ実績を重ねている。

2年目となる本助成では、さらなる人材育成やモデル事例の創出、そしてより価格の高い買取先を開拓し、広域的なサプライチェーンを構築していくなどの課題に対して、果敢に挑んでいく決意である。さらに、こうした「山を守る」取り組みが、自然災害に強い森林づくりにつながることから、被災3県からの発信としても大いに期待を寄せているところである。

団体概要・事業詳細:東北・広域森林マネジメント機構

一般社団法人 さとうみファーム

羊がつなぐ被災地の輪

本団体は、南三陸町のわかめ残渣を活用した飼料を与えた羊を飼育・出荷するだけでなく、観光牧場や子ども対象のイベントなどを通じ、南三陸町の復興支援、地域経済の発展と環境の改善に取り組んでいる。第2期の助成1年目は、第1期の活動によってつながった団体とともに、新商品づくり・販路開拓、交流事業などを行った。

2年目となる本助成では、これまで培ったスキル・知識・資源を活用して、「羊」を核とした被災地連携ネットワークを構築することに加え、連携団体における地域の活性化・地域課題の解決に貢献することを目指す。また、1年目で企画した商品のブラッシュアップ・販路開拓に注力するとともに、連携団体の交流を深め、協働イベントの開催や報告会などを実施することにより、課題の共有や課題解決力の強化に取り組む。また、連携団体においても宮城県だけでなく、福島県・岩手県にも広く求めていくことを期待したい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 さとうみファーム

B. 住民のエンパワメント

一般社団法人 ワタママスマイル

「地域子ども食堂」による子どもの居場所づくりと地域コミュニティ再生事業

本団体は、宮城県石巻市において「ワタママ食堂」を開設し、被災した女性を雇用しながら、仮設住宅や復興住宅等の高齢者を対象に、弁当の宅配サービス等で「食」を通した見守り支援を実施してきた。

第2期の助成1年目は、地域の子どもたちにも目を向け、「食」を通じて子どもたちや高齢者が地域とのつながりを作れるよう支援しており、地区毎の進捗状況に差はあるが、子どもたちの参画、地域福祉の視点など多くの人に居場所と役割を作ることにつながっている。

2年目となる本助成では、地域子ども食堂を核として、地域の課題解決力が向上していくことが期待できる。強みがある配食事業との連携、子ども食堂に取り組む他団体との連携、行政への働きかけなどを通じて、発信力や子どもたちの抱える課題の解決力を強化していってほしい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 ワタママスマイル

一般社団法人 Bridge for Fukushima

南相馬市エンパワメント化事業 ~Evidence Based Policy Makingの手法を用いた、医療・健康リテラシーの向上~

本団体は、福島県で住民主体の震災復興が行われるよう2011年4月から活動を開始し、現在を復興前期ととらえ、人材育成と住民のエンパワメントを主眼とした取り組みを行ってきた。第2期の助成1年目は、南相馬市において、データに基づく復興街づくりを目的に、客観的なデータ・根拠を用い、それを可視化するデータブック作成などを行った。

2年目となる本助成では、住民の漠然とした不安や、なんとなく感じている変化を解明し、今後の復興を考えるための共通の現状・課題の認識を持つことを助ける。住民へのヒアリングから出た健康への関心や不安についてオープンにされている既存データを集約する。その後、住民参加型会議を通じ、今後の南相馬市の復興に向けた地域の公共サービスや健康についての住民の思いを明らかする。地域の課題を行政にどう橋渡しし、住民のエンパワメントにつなげることが出来るか、注目していきたい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 Bridge for Fukushima