震災の経験・教訓を伝える活動の今後を考える研修会

テーマ別研修

震災の経験・教訓を伝える活動の今後を考える研修会

日時
2018年3月29日(木)~30日(金)
場所
岩沼屋(宮城県仙台市)
参加者
岩手、宮城、福島の被災地で活動するNPO9団体の役職員11名

実施概要

東日本大震災から8年目を迎え、国・自治体によって、津波などの被害をうけた施設(遺構)の保存、教訓を伝える伝承施設、祈念公園の設置などハードの整備が進んでいる。一方で、実際に被災経験・教訓を伝える活動は、各地のNPOや個人が担っている状況である。
この分野の活動は公的支援が不充分であり、プログラムの質の向上、担い手確保・育成、活動継続のための資金確保などの共通課題を互いに補い、必要に応じて連携しながら、取り組んでいく必要が高まっている。

今回の研修は、被災経験・教訓を地域内外に伝える活動を行う団体同士が互いの想いや活動内容を理解する時間、過去災害などの取り組みを聞く時間を設けて、今後の協力・連携のきっかけとすることを目指した。

プログラム1日目は、阪神・淡路大震災の事例を認定NPO法人まち・コミュニケーションの宮定さんから、中越地震の事例を公益社団法人中越防災安全推進機構の玉木さんからじっくりお話いただいた。お話を受けて参加者で小グループになって感想や質問などを共有し、その中からいくつかの質問を講師に答えてもらうという形式で進めたため、参加者の理解度も増した。また、東日本大震災の伝承活動を行う個人・団体・震災伝承拠点を結ぶネットワークとして昨年発足した「3.11メモリアルネットワーク」の紹介も行われ、その後の夕食・情報交流会でも講師や参加者同士の活発なやり取りが行われた。

プログラム2日目は、参加団体の現状を見つめ直し、課題を洗い出すことから始めた。その後、お互いに課題を共有し、お互いに質疑応答を繰り返しながら深堀するワークショップを行った。この研修をきっかけに、お互いに情報交換をしていこうなどのやり取りも始まった。

プログラム

事例発表1「“共助”による 地域間交流と“語る”ことによる 被災者の想いの表現による地域づくり」

  • 認定特定非営利活動法人まちコミュニケーション 代表理事 宮定 章さん

阪神・淡路大震災23年・東日本大震災6年・熊本地震1年の活動経験から魂のこもったお話をいただいた。特に被災者が想いを表現していくことで、まちづくりにも防災にも良い影響があるから伝承が大事であることを学んだ。

事例発表2「中越メモリアル回廊の取り組み~連携で伝える被災の経験・教訓~」

  • 公益社団法人 中越防災安全推進機構 事務局長 玉木賢治さん

中越地震の支援への「恩返し」をとして、被災地の復興まちづくりと防災活動を続けているお話を聞いた。中越には4施設・3公園を繋いでメモリアル回廊として連携して運営をしているだけではなく、「誰のため、何のため」の原理原則を忘れずに日々、経験を伝え続けていることを学んだ。

紹介「3.11メモリアルネットワークについて」

  • 3.11メモリアルネットワーク 理事 中川政治さん

東日本大震災の伝承活動を行う個人・団体・震災伝承拠点を結ぶネットワークを形成し、将来にわたり伝承活動を続け、命を守り、社会の困難に立ち向かう活力ある人・地域づくりに取り組むことを目的として、2017年11月に発足した。

ワークショップ

事業の課題を深堀するワークショップ

自団体の現状、今後目指す姿を明らかにしたうえで、事業の課題を考えた。その課題をグループで共有した。その後、お互いに課題に対して質疑を行うことで課題が深堀され、本当の課題が発見されることによって、課題解決への一歩を歩みだすことが出来た。

参加者の声

  • 住民参加の難しさと、外部支援者の関わり方の難しさのミックス。「誰のための何」なのかを問う事が重要だと感じました。
  • (中越の話を聞いて)限りある財源の中、今後独自収入で活動していくための課題感や、その取り組みについて今後も学ばせていただく点が多いと感じました。
  • グループディスカッションで様々な立場で「震災の経験・教訓を伝える活動」に取り組んでいる方々と垣根なしの話し合いができ、お互いの情報や考え方を知る機会になったことは、今後の活動に活かすことにつながると考えます。

参加者アンケートでは、参加者の82%が「震災伝承活動の意義を再確認できた」「参加団体同士で今後の連携・協働の可能性がうまれた」と回答している。