活動報告:助成事業

第2期第2回助成事業 成果報告会(2018年12月4日)

全国からの支援も減っていく中、地域では復興の先を見据えた「つながり」づくりも動き出している。一団体でできることは少ないが、パートナーと共に新しいことに挑戦する団体や、地元住民と一緒に頑張ろうとしている団体もある。多くの人や団体とつながり、共に動くことで新しい道が開けたり、一団体ではできなかったことが出来るようになったりする。

実際に「連携・協働」や「住民のエンパワメント」活動を通じて見えてきた課題やうまくいったことなどをパネル形式の事例報告を行い、今後の復興について考える機会とした。

成果報告会は、タケダ・いのちとくらし再生プログラム事務局/日本NPOセンター常務理事の田尻の挨拶から始まり、その後本プログラム第2期事業概要と助成事業に関して説明を行った。

事例報告の対象団体は、第1回継続助成(事業期間:2018年1月~12月)4団体、第2回新規助成(事業期間:2017年10月~2018年9月)5団体の計9団体となった。

上記9団体のうち「連携・協働」をテーマにして活動した5団体と「住民のエンパワメント」をテーマにして活動した4団体に分けて2部構成で行った。

事例報告は、事業内容の報告だけではなく、KPT法をベースとし「良かったこと&その改善点」と「課題&その解決策」について話してもらった。

 

「連携・協働」

5団体が事業を通じての成功事例や課題などを発表した。

2年目助成事業終了を迎えた、さとうみファームと東北・広域森林マネジメント機構は、1年目の課題を踏まえて事業を実施してきた。ただ単に連携団体を増やすというものではなく、各団体の強み・弱みをしっかりと考えて、Win-Winの関係になるようしている。

さとうみファームは、製造は出来るが、販路が弱いので、販路をもっている団体と連携することで販売ルートを広げることもできるし、商品開発にヒントももらうことが出来る。

東北・広域森林マネジメント機構の自伐林業の講座は年間90名程度参加しているが、100%東北の方々であり、2年目にして福島県にも協力団体がでてきた。

くらしのサポーターズ・子ども∞感ぱにー・しんせいは、1年目助成事業を終えての報告を行った。くらしのサポーターズは、社会的援護を必要とする若者支援における行政の制度の隙間を埋めるべく、同じ思いをもつ団体と一緒に取り組んでいたが、その分野に新しい行政財源がついたので次年度はその制度をつかって事業を進めていく。

子ども∞感ぱにーは、地域で子どもを見守る体制づくりを行ったが、地域の共感があり地域ごとの事情にあわせて体制がつくられて始めている。

一団体で解決できないが、いくつの団体が連携することで、行政と対話ができ社会的変化が起きるかもしれないとコーディネーターの田尻からコメントがあった。

事例報告者

<<第1回継続助成>>(事業期間:2018年1月~12月)

  1. 一般社団法人さとうみファーム(宮城県南三陸町)
    金藤 克也さん「羊がつなぐ被災地の輪」
  2. 東北・広域森林マネジメント機構(宮城県仙台市)
    三木 真冴さん「被災3県森林資源活用による地域発展プロジェクト」

<<第2回新規助成>>(事業期間:2017年10月~2018年9月)

  1. 特定非営利活動法人くらしのサポーターズ(岩手県盛岡市)
     吉田 直美さん「いわての若者くらし仕事支援事業」
  2. 特定非営利活動法人こども∞感ぱにー(宮城県石巻市)
    田中 雅子さん 「こどもの「SOS」をキャッチし心と命を守る事業」
  3. 特定非営利活動法人しんせい(福島県郡山市)事務局代行
    「故郷に帰れない避難者の孤立を軽減し自立を促すためのプログラムづくり」

コーディネーター 田尻 佳史

 

「住民のエンパワメント」

4団体が事業を通じての成功事例や課題などを発表した。

ワタママスマイルとBridge for Fukushimaは、2年の助成期間を終えての報告を行った。

ワタママスマイルは地域子ども食堂が地域にとって居場所のひとつとして認めてもらうことが住民エンパワメントになると考え、住民に負担がかかりすぎない範囲で開催回数などを調整している。Bridge for Fukushimaは、南相馬市住民の暮らしと健康に関する問題を可視化して住民と一緒に話し合うことで、課題を自分事をして捉えてもらえるような取り組みを行った。

ウィメンズアイといわき自立生活センターは、1年間の事業を終えての報告を行った。

ウィメンズアイは、女性のエンパワメントの第一歩として、心と体が健やかであることが必要だと思い、そのような講座をしたうえで、コミュニケーションや仲間づくりを行った。

いわき自立生活センターは、農福連携を活かして障がい者と原発広域避難者が一緒に農業に携わった。収益をしっかりあげるまでは至らなかったが、障がい者が作物をつくる喜びを知ると同時に、一緒に活動することによって避難者に障がい者理解が深まった。

住民エンパワメントと一言でいっても取り組みの方法も変化してきている。初期はいろいろなことを仕掛けて一緒にやることでエンパワメントしてもらうというイメージから少し距離を置きながら自分たちで考え選んでもらう方向もあるかなと感じていると田尻からコメントがあった。

事例報告者

<<第1回継続助成>>(事業期間:2018年1月~12月)

  1. 一般社団法人ワタママスマイル 菅野 芳春さん
    「「地域子ども食堂」でつながる地域の居場所と地域支え合いの仕組みづくり」
  2. 一般社団法人Bridge for Fukushima 伴場 賢一さん
    「南相馬市エンパワメント化事業 ~Evidence Based Policy Makingの手法を用いた、まちの暮らしと健康に関するデータブック~」

<<第2回新規助成>>(事業期間:2017年10月~2018年9月)

  1. 特定非営利活動法人ウィメンズアイ  栗林 美知子さん
    「宮城県北地域における女性のエンパワメント事業」
  2. 特定非営利活動法人いわき自立生活センター 長谷川 秀雄さん
    「~趣味から営農へ~被災地NPOと高齢者による休耕田活性化協働事業」

コーディネーター 田尻 佳史

 

 

「助成選考委員の講評及び閉会挨拶」

武田薬品工業株式会社 CCPA CSR企業市民活動・寄付担当部長 吹田 博史さん

本タケダ・いのちとくらし再生プログラムは10年事業であるが、7年半の3/4が過ぎた。

助成事業の応募も「連携・協働」のテーマが少なく、「住民のエンパワメント」のほうが多かった。今回の報告を聞いて、連携と住民エンパワメントの違いがハッキリしてきたと思う。

今回の報告会のテーマが「ネクストステップへ ~つながる、ふかめる~」となっていたが、「連携・協働」には『広がる』、「住民のエンパワメント」には『高める』というキーワードが加わっていると感じた。

「連携・協働」は、団体が主体となって進めていくが、「住民のエンパワメント」はその反対で住民にどう主体的に関わってもらうかが非常に苦労されていると思う。

ネクストステップとして、どうつながりを広げていき、どう主体感を高めていくかがポイントになるが、まだまだ出来る部分はたくさんあると思うので、引き続きがんばっていただきたい。

 

 [第2期第2回助成事業 成果報告会チラシPDF:1.3Mb]

 

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